山形の赤倉温泉に行ってきた~山里の錆びた温泉地と麺を堪能する旅
非日常に身を置くのは楽しい。そこに住む人たちでしか見えないものもあるが、そこに住んでいないわたしにしか感じられないこと---非日常もあるのだろうと思う。日常に疲れたときこそ、日常から離れて、日々の喧騒から抜け出し、ゆっくりとした時間を過ごすのが良薬だと思う。
宮城県北の鳴子温泉郷は何度行っても飽きないが、雪の降る前に、JR陸羽東線でひと足伸ばして山形の赤倉温泉へ湯浴みに行ってみることにした。
阿部支店
赤倉温泉駅の真向かいのラーメン店。
ラーメン@500円
鶏ガラスープと醤油ダレというラーメンの王道ともいえる組み合わせに絡み合うのは、自家製のモチモチ太麺。食べ進めるほどに豚バラチャーシューの脂が溶けて、スープのコクが増す。直径数㎞にラーメン店は一件もないというのに、味は間違いなくラーメン激戦区でも通用するクオリティ。
テーブル席と座敷のみでカウンター席はなし。この日、13時半を過ぎてもこじんまりとした店内は満席で、相席になった。
赤倉温泉へ向かう
赤倉温泉駅から赤倉温泉駅までは一日に数本ほどの町営バスに乗るか、宿の送迎を予約するかのいずれかが主な交通手段になっている。歩くと徒歩40分ほど。そんな中、歩く物好きなんて…物好きなんて…。
農閑期の里山。
柿の熟れる青空。
車はびゅんびゅん追い越して行くけれど、歩いているのはわたしだけ。
澄んだ川の色と音に自然と心も癒される。
吊り橋を発見。少し怖い。渡らなかった。
ようやく温泉地・赤倉温泉に到着
最上小国川沿いに温泉宿が数件。泉質はナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉。それぞれの宿が自噴の源泉を持ち、湯めぐりチケットで日帰り入浴をするのもおすすめだ。
このご時世であっても街にはコンビニの一軒もない。代わりにあるのは昔ながらの商店と土産店。赤倉温泉唯一の酒屋は最近潰れてしまったらしく、時代の流れには抗えないのだと感じる。
河原の石を掘ると、温泉が湧き出てくるのだとか。さすが湯量豊富な赤倉温泉。
山間の温泉地なだけあって、海の幸より山の幸。
赤倉温泉 湯守の宿 三之亟
今回の宿。
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ロビーには囲炉裏や次の間があり、古びた和の雰囲気が楽しめる。
素泊まり(旧館湯治棟和室)休前日料金@5000円+税(消費税・入湯税)
テレビもトイレもない、最低限の設備の部屋。冷蔵庫あり。素泊まりでもアメニティ(バスタオル、手ぬぐい、歯ブラシ、歯磨き粉、浴衣)が付く。部屋にトイレはないが、男女別で比較的キレイなトイレも完備。部屋の鍵もちゃんと閉まる。何度か湯治宿に素泊まりで泊まったことがある人ならわかることだが、ここまでしっかり揃ってこの価格は優秀。もっとも慣れない方には素泊まりはおすすめできないが。
浴場は3か所あって、いずれも男女交代制。源泉かけ流しだが、加水あり。
※人のいないときにスマホで撮影した写真です。
クラブ食堂
赤倉温泉に来たら素泊まりにしようと決めていた。夜はこの食堂で食べてみたかったからだ。
この雰囲気であるが、侮るなかれ。最上町特産のアスパラガスを練り込んだ自家製麺が堪能できるお店なのだ。
アスパラ麺のつけ麺セット@1100円
アスパラ麺とトマト麺の盛り合わせ。
アスパラガスは、赤倉温泉がある最上町の特産物。地元産のものにこだわり、農家から一年分仕入れたものを冷凍して一年中販売できるようにしているのだとか。青臭さはなく、ほんのりとアスパラガスの風味がするので食べやすい。
トマト麺にも地元産のトマトを使用。ピューレ状にしたトマトを長時間煮込んで作るが、コンロではなく七輪を使うのがおいしいトマト麺を作るコツなのだとか。こちらはアスパラガスよりもトマトの味がしっかり感じられる。
いずれの麺も加水せずに野菜の水分だけで作っている。醤油ダレと塩ダレの2種類のタレでも付き、小鉢も充実。食後には蕎麦ツユも味わえる。これが1100円だなんて。
取材慣れしているのか、イチ聞くと百答えてくれる店主で充実した食レポになってしまった。
もちろん。
<終わりに>
錆びた温泉街で周りに何もないけれど、湯めぐりしたり、温泉街をそぞろ歩きしたり、ゆっくりとした時間を過ごすのには良さそう。まさに湯治に最適な温泉地だ。店主に聞くと、繁忙期は10月だというが、穏やかな土曜にここまで閑散としていることに心配になる。錆びた雰囲気が好きだとはいえ、存続が危ぶまれる状況は不安でもある。一泊二日、楽しませてもらったのでなんとか頑張ってもらいたいものである。